花筏(はないかだ)

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僕の桜が散っていく。
正確には裏の川沿いの桜並木だけど、僕の部屋から手を伸ばせば枝に触れられるから、僕の桜なんだ。
桜の花びらが川面を桃色に染めて流れていく様子を、花筏と呼ぶと教えてくれたのは、ばあちゃんだった。
「あたしが死んだら、この花筏で浄土に送られたいもんだ」ってよく言ってたっけ。
――惜しかったね、ばあちゃん。桜が咲くまであともう少しだったのに。
寂しくなって、鼻の奥がツンとしたとき、ふと川を見て僕は驚いた。
花筏に座ったばあちゃんが、ぷかぷかと川上から流れてきたのだ。
思わず「ばあちゃーん!」と叫ぶと、ばあちゃんも気づいて立ち上がり、花筏をぴょんぴょん飛び移りながら流れに逆らっているので、僕は拍手した。
「花筏が四十九日に間に合って、孫にも見送ってもらえて、もう思い残すことはない。そろそろ行くわなぁ」と言い、手を振りながら川下へ流れていくばあちゃんの顔は、とても楽しそうだった。
ファンタジー
公開:18/02/28 23:56
更新:18/11/03 09:01

滝沢朱音

小説を書いています。SF(すこしふしぎ)系や、生と死を見つめた作品が多いです。
Twitter☞ https://twitter.com/akanesus4

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