のびるやじろべえ

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ある日、アパートのドアポストの中にやじろべえが入っていた。
細く小さい、よく見る形で奇妙な程に柔らかく四方八方に伸びる。触っていると不安な気持ちも不思議と安らぐ。
何も無い日常を不満に感じていた私は運命だと思った。
翌日、苦手な先輩と二人の仕事が延期になった。あくまで『延期』だが。他にも私の髪がのびるのが早くなったり、上司の鼻が伸びたり、強制有給が貰えてのびのびと休んだり。
この不思議な現象のある日には必ず鞄にやじろべえが入っていた。
勿論、このやじろべえにも短所がある。
休憩所に置いてくると職場の一番嫌いな上司の小言ついでと帰ってくるし、部屋のどこかに失くすとレポートのありえない所で誤字脱字する。
楽あれば苦あり。この仕事も幾分か楽しくなったし、笑顔の無かった職場もやじろべえを持ってくると華やかになっている気がする。
今までの分を楽するには、このやじろべえを大切にすればいいのだ。
SF
公開:18/02/28 21:48
更新:18/02/28 21:49

腹痛

犬派です

作品に使用している画像はすべてフリー素材です。
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