赤くしてあげる

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「わたし、赤が好きなの。虹の中でも赤。白か黒かを聞かれても、心の中では赤っていうくらいにね。結婚式に白無垢は絶対に着ない。白いドレスじゃなくて赤を着るわ。ブーケだって赤いバラの花束がいい。結婚指輪の石はルビー。赤ってなんてすてきなの。炎のように情熱的で、生命力に満ちていて、絶対に悲惨な運命に屈しない色よ。どうしてこんなに惹かれるのかしら。きっと私の体も貴方の体も赤で満たされているからよ。血も心臓も赤いから。内から欲しているんだわ」


赤を愛する彼女は結婚する。
式場の控え室には、明日彼女が着る純白のドレスがある。彼女にしてあげられることはただ一つ。


「これじゃまるで喪服よ」
式を前に花嫁は泣いた。控え室の臭気に新郎は眉をひそめる。白かった花嫁衣装は赤黒く、柔らかな布は硬くなっていた。


式場近くの川で遺体と包丁が見つかったのはその日の朝。
死因は胸の刺し傷。
花嫁の幼馴染だった。
ホラー
公開:18/03/01 20:16

砂塵

読んでいただきありがとうございます。
話のおもしろさ云々はひとまず置いといて、とりあえず一本完結させることを重視して書いてます。
朗読ラジオ「月の音色リスナー」です(^o^)/
低浮上中なのでコメント返し遅れるかもですが必ずお返しします。

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