百合

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私には今年で成人を迎える幼馴染が居る。
綺麗な黒髪に茶色がかった瞳を持った綺麗な子なのだが、彼女は生まれつき色が見えない。俗に言う色盲なのだ。
先生はふと、何のきっかけも無しに直る可能性も拭えないと言い、もう十年近く様子を見ながら私たちは二人で同棲している。
彼女の目にはあの生け花も、私の姿もきちんと見えていないと思うと心が締め付けられ、自分の無力さに奥歯を噛み締める。

そんな事を思いながら食器を洗っていると、ソファの方から彼女の泣き声が聞こえた。
私は勢いよく流れる水も気に留めず、彼女の元へ向かう。
すると彼女は私の姿を見るなり、溢れる涙を拭って、震える声を我慢する様に言った。

「綺麗、だね」

それは、長年の苦しみから解放された感想にしては少しずれていたが、私の涙を誘うには十分すぎるほどの言葉だった。
これから彼女に、自分の容姿と花を見せ、後悔させてみせようと思う。
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公開:18/02/27 18:47

GaNTai( じゃぱん )

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