朝顔

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両親の関係は絵描きとモデルでした。父は母が小さかった頃から、母をモデルにスケッチしていました。会えばいつもまじまじと見つめられ、母は大層恥ずかしがりましたが、父があまりに熱心に鉛筆を動かすので、描かれるままにしていました。母はスケッチを通して、人から見られる自分の姿を知りました。
ある夏の日、母は父の生家に越してきました。その頃の母はとても美しく、水をはじく肌の色艶に父はうっとりとしていました。しかし、母は日が出ている内は普段通りなのに、夜になるとふさぎ込むようになりました。父は母を日当たりの良い所へ移し、日差しの中で母を描きました。
秋に私を産み落とし、母はその生を終えました。
母は私に記憶を引き継ぎました。土の中で私は発芽を待っています。同じ家に住んでいても父は私のことを知りません。実際に会うまでの秘密です。父は朝顔の私に気付くでしょうか。母のように、私も絵にしてくれるでしょうか。
その他
公開:18/02/27 15:16
更新:18/05/26 14:28

砂塵

読んでいただきありがとうございます。
話のおもしろさ云々はひとまず置いといて、とりあえず一本完結させることを重視して書いてます。
朗読ラジオ「月の音色リスナー」です(^o^)/
低浮上中なのでコメント返し遅れるかもですが必ずお返しします。

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