ロケ

「はい。こちら〇〇商店街です。今人気のお店、これから行ってみたいと思います」
　マイクを持ったリポーターがカメラ目線で歩き始めた。
　すれ違う人たちが振り返っていくのが後ろに映っている。
　地味な色の服を着た女が遠くシャッターの前でこっちを見ていた。なぜか違和感を覚え、確かめようとしたが、リポーターの肩に隠れてしまう。
　再度見えないか期待したが、かなり遠ざかってから見えたシャッター前にはもう女はいなかった。
　去っていく姿など映らなかったが、うまく死角に入っていたのかもしれない。
　だが、進んでいくリポーターの遠く後ろにまた同じ女が映り込み、またすぐ肩に隠れる。
　何度も現れては肩に隠れ、その度に距離が縮まっていた。
　それでわかった。地味な色なのは服が焼け焦げているからだと。
「こちらがそのお店です」
　立ち止まったリポーターの肩には女の焼け爛れた顔が乗っていた。