トロピカルビワ

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庭に大きな水たまりができるほどの大雨だった。今日は快晴。溜まった洗濯物を干していると背中に視線を感じた。振り返ると、水たまりから目玉が覗いている。それがすうっと上がるとごつごつした長い顎が現れる。
庭にワニが出た。
私が急いで家に入ろうとすると、ワニが呼び止める。
「わたくしは水たまりを通って美食の旅をしているワニです。食べ物を恵んでくださいませんか」
「そんなこと言って、私を食べるんでしょう」
「いただきません。ヒトはおいしくないのです。この木の実を分けてくれますか」
ワニはビワを要求してきた。私は数個皮を剥いてやり、大きく開いたワニの口に投げ入れる。ぱくりと食べるとワニは目を輝かせた。気に入ったようだ。ビワの種を持ってワニは水たまりに消えていった。
数年後ワニはお詫びにと、ビワをたくさん頭に乗せて現れた。
「皮が剥けないのです」
私が皮を剥き、2人で食べる。トロピカルなビワだった。
ファンタジー
公開:18/02/28 12:21
更新:18/02/28 22:54

砂塵

読んでいただきありがとうございます。
話のおもしろさ云々はひとまず置いといて、とりあえず一本完結させることを重視して書いてます。
朗読ラジオ「月の音色リスナー」です(^o^)/
低浮上中なのでコメント返し遅れるかもですが必ずお返しします。

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