同い年の硬貨(タカシ)

4
220

「確かこの辺りだったよな」

真っ暗な高架下をスマホの灯りを便りに探す。しかし見当たらない。
朝、通学時にスマホが鳴った。慌てて取り出した拍子に、ポケットの中身をぶちまけてしまった。その中にはタカシがお守りとして持っていた10円玉も含まれていた。

タカシが生まれた日、彼の父は偶然その年に製造された10円玉を手に入れた。その日からタカシのそばにその10円玉が寄り添った。どこに行くにも持ち歩いた。
遠足の前、おやつを買いに行ったとき、所持金が10円足りなかった。一瞬『この10円玉を使ってしまおうか』と思ったが堪えた。遠足のおやつより大事なもの。その日から10円との絆がぐっと強くなった気がした。

「20年間ずっと一緒だったのに」

スマホがメール着信を知らせた。アケミからだ。「10円玉を綺麗にする方法を教えて」『10円玉』の文字を見て涙があふれた。「わるい、専門外」そう返すのがやっとだった。
その他
公開:18/02/27 09:39
更新:18/02/27 09:46

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容