サクラ

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サクラはどうするの、と聞かれて答えに詰まった。
正直何も考えていないし、考えて何かが出てくるとも思えない。
友人にあいまいに笑いを返し、じゃあまた明日とすれ違う。
カバンに入れっぱなしの進路相談の紙は、ぺらっぺらのくせにひどく重くて、それでいて風が吹いたら飛んでいきそうだった。
家に帰ると母親がいて、庭の手入れをしているうちに父親が帰ってきて。そんな時に、なんて書こうか、と言葉が口をついた。
私たち一家は、来月引っ越す。この一軒家を離れて街中のマンションへと移っていく。
ふと父を見ると、サクラはどうするの、と母に聞かれて答えに詰まっていた。
私の名前にちなんで植えた、サクラの木。当然持っては移れない。
せめて枝を1本、折って持っていきたい。両親にそういった。根は張れないだろうし突然枯れるだろう。だけど、綺麗な花が咲くことは、私は知っている。何処で見ても綺麗であるという事も、知っているのだ。
その他
公開:18/02/27 03:09

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