魔法のジャケット

　彼女は春先に向けて白の爽やかなジャケットを購入した。丈が短めのデザイン。まるでオーダーメイドのように体にぴったり合っているお気に入りの一着だ。
　彼女は早速ジャケットを着て街を歩く。するとアイスクリームを持った子どもが彼女にぶつかった。ジャケットに大きな染みが出来てしまった。しかし不思議なことに家に着く頃には綺麗になっていた。またジャケットを羽織って外に出た。すると今度は喫茶店でコーヒーをかけられた。気付いたらジャケットに付いた染みは消えた。このようなことが何度も続いた。
　「これは魔法のジャケットなんだわ！」と喜び、彼女はそれから毎日ジャケットを着た。
　ある日、彼女は自分の背中を見て驚いた。そこには身に覚えがない染みがたくさん広がっていた。鏡で観察した結果、色や形からしてジャケットに付いた染みであることに気が付いた。彼女は今までジャケットに作った染みの量を思い出してその場で失神した。