靴の花束

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私の靴は、花を咲かす。
履いて歩けば、アスファルトでも砂利道でも、その後ろには花の路が出来上がっている。私は嬉しかった、とても綺麗な路を私がつくっている事実に感動した。
たけど、次の日同じ路を歩くと、人や車が通って花は潰れていた。
悲しくなった私は、泣きながら靴をシューズケースの奥に閉まった。

十数年経って、夫のもとへ迎えがやって来た。
穏やかに眠った夫の亡骸は焼かず息子に頼んで、何も誰もいない丘へと運んでもらった。夫の遺言に此処へ連れてくるようにと書いてある、と嘘をついたからだ。
荒れ果てた土地だったが、息子は何も言わず夫を埋めた。

数日後、今度は一人で訪れた。
そして、十数年ぶりに再会した靴を履いた。
あの頃と変わらず靴は、花を咲かせた。
夫の上には辺り一面に花の絨毯が広がる。その絨毯から何輪か摘み取り、夫の墓標に供えた。

花の絨毯を眺めながら、あと少し待っててね。と夫に囁いた。
ファンタジー
公開:18/02/26 17:30

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