花アレルギー

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「私、花アレルギーなんだけど。それでもいい?」
交際当初、彼女が不安げに言った。「気にすることないよ」僕は励ました。花アレルギーと言っても花粉症の一種だろう。そう甘く見ていた。しかし現実は違った。彼女は「花」と名の付く物も受け付けないのだ。お花見を楽しめないのはもちろんのこと、花火もダメ。花柄もダメ。それらに触れるとひどい湿疹と発作が彼女を襲うのだ。
苦労はしたが、それでも二人の未来の為に何とか克服してきた。
そして数年後、結婚式を挙げることになった。花を施していないドレスを選ぶのは大変だったし、式場に花を飾れないのは殺風景だったが、工夫を凝らし何とか式当日を迎えることが出来た。
しかし、彼女との結婚式は上手くいかなかった。
指輪の交換をした時だった。彼女が僕の前から逃げ出してしまったのだ。耐えられなかったのだろう。
「花婿」である僕に触れられるのも「花嫁」となった自分自身にも。
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公開:18/02/26 14:23

塚田浩司

料理屋の当主、ソムリエ、三姉妹の父。

第15回坊ちゃん文学賞ショートショート部門大賞

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