ドレス猫

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ペットショップで一目惚れして、ドレス猫という猫を飼いはじめた。ペルシャ猫に似ているのだが毛の一本一本が光っていて、まるでサテンのドレスを着ているように見えるのだ。
猫のおかげで、地味だったわたしの毎日は一変した。
単にかわいらしさに癒されるだけでなく、猫を見ているだけで気分が華やぎ、何事にも前向きな姿勢で臨めるようになっていった。それが影響してのことだろう。仕事もうまくいくようになり、目立てる存在にもなってきた。

ただ、目立つと言えばちょっと困ったこともあった。猫を飼うようになってから、すれ違う人たちにじろじろ見られるようになったのだ。一部の人は憧れの眼差しを注いでくれるが、ほとんどの人は不審そうな顔で通り過ぎる。
でも、それも当然だろうと、鏡を見ながらわたしは思う。そこに映る自分の姿は、ツヤッと照り輝いている。
猫の毛が服につくせいで、わたしまでもがドレスを着ているようになるのである。
ファンタジー
公開:18/02/24 14:48
更新:18/02/24 14:49

田丸雅智( 東京 )

1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。2011年、『物語のルミナリエ』に「桜」が掲載され作家デビュー。12年、樹立社ショートショートコンテストで「海酒」が最優秀賞受賞。「海酒」は、ピース・又吉直樹氏主演により短編映画化され、カンヌ国際映画祭などで上映された。15年からは自らが発起人となり立ちあがった「ショートショート大賞」において審査員長を務め、また、全国各地でショートショートの書き方講座を開催するなど、新世代ショートショートの旗手として幅広く活動している。著書に代表作『海色の壜』など多数。

◆公式サイト:http://masatomotamaru.com/

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