彼女の枝毛

授業の休み時間や放課後に、なんとなく集まっては無駄話をする男女混成の八人の中に僕はいる。
その中で僕より一足先に十八歳になった女子がある日、メモとも手紙ともいえないような妙な紙切れを手渡してきた。
「女の子は、女の子になるのではない。女の子にさせられるのだ。どんなに面白い本、役に立つ本を読んでいても、ふとほっぺたにくっついた髪の毛に枝毛を見つけたら、その本を放り出して、他の枝毛を探すのだ。」と書かれていた。
僕は、へえそういうものかと思った。
思ったけれども、彼女がいったいどんなものに「女の子にさせられる」のか。だいたい、僕にどうしてそんなことを書いて渡してきたのか、全くわからない。
わからないけれど、ともかく彼女に「なんか、しんどいの？」とだけ聞いてみた。
ゆっくり微笑んで「うん」と答えた彼女のほっぺたにくっついた髪の毛を、少しだけ見てみた。