落ちた先

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神様に連れられて空の端へとやって来た。覗いてご覧と言われても下界は重なる雲の下。仕方がないのでソッと耳を傾ける。
聞こえて来たのは、地の底から這い上がって来るような低く呻く女の声。どれだけの苦痛に耐えているのか、時折悲鳴に近い叫びも上げている。
恐ろしさに思わず退いたが、神様はその両肩をそっと掴んだ。
「お前はこれからあそこへ行くのだよ」
逃げようと暴れたけれど、無駄だった。
神様は掴んだ肩をそのままドンと突き飛ばした。
どうしてあんな恐ろしい所へ行かなくてはならないのだろう。
なんで神様はこんな酷い事をするのだろう。
「うわぁぁぁーん!」
大きな泣き声はそのまま雲間に吸い込まれて行った。

それからしばらく空の辺りで佇んでいた神様の耳に、遥か下の方から健やかな産声が聞こえて来た。
「やれやれ。あれだけ元気に泣く子なら、すぐに戻って来ることはないでしょう」
神様は満足そうに微笑んだ。
ファンタジー
公開:18/02/25 00:39

堀真潮

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