手品師とうぐいす
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「さあさあ、ご覧下さい」
機嫌良く言った手品師の差し出した掌の上には、薄紅色をした丸いものがのっている。
「よーく、見ていてくださいね」
彼はこちらに向かって目配せをすると、もう片方の手に持ったステッキで丸いものを三度軽くつつき、それを手で包み込んだ。
「いち、に、さん!」
リズムよく数えた後、開かれた掌の上には可愛らしい小ぶりの花が咲いていた。鮮やかな花であるが、とりわけ珍しい手品ではない。そう思っていると、手品はまだ終わりではないと、彼は言う。
「この梅の花、実は食べられるんです」
どうぞ、ご試食下さい。
彼に勧められるがまま花を口に放り込むと、上品な甘さがふわっと舌の上に広がった。あまりの美味さに私は目を白黒させる。
「私、転職する前は和菓子職人をやっておりまして。味には多少の自信があるのですが、如何でしょうか?」
そう訊く手品師に対して、私は微笑み、口を開く。
「ホーホーケキョ」
機嫌良く言った手品師の差し出した掌の上には、薄紅色をした丸いものがのっている。
「よーく、見ていてくださいね」
彼はこちらに向かって目配せをすると、もう片方の手に持ったステッキで丸いものを三度軽くつつき、それを手で包み込んだ。
「いち、に、さん!」
リズムよく数えた後、開かれた掌の上には可愛らしい小ぶりの花が咲いていた。鮮やかな花であるが、とりわけ珍しい手品ではない。そう思っていると、手品はまだ終わりではないと、彼は言う。
「この梅の花、実は食べられるんです」
どうぞ、ご試食下さい。
彼に勧められるがまま花を口に放り込むと、上品な甘さがふわっと舌の上に広がった。あまりの美味さに私は目を白黒させる。
「私、転職する前は和菓子職人をやっておりまして。味には多少の自信があるのですが、如何でしょうか?」
そう訊く手品師に対して、私は微笑み、口を開く。
「ホーホーケキョ」
ファンタジー
公開:18/02/22 03:05
行き場をなくした文字の羅列たち。
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