第21話「夢のドラングラー」

葵の彼氏の匠は釣りが趣味だったが、ある時からドローンでルアーを引っ張ってブラックバスを釣り始めた。葵は休日のたびにボート漕ぎを手伝っていた。ある日、それが釣り具メーカーの目にとまり、釣り専用のドローンを作りたいと話を持ちかけられた。
これは業界で大きな話題となり、匠はプロ契約をして新開発のドローンを使ってトーナメントに出ることになった。
3ヶ月後、1千万の巨費を投じ、レシプロエンジンによる高出力化、魚群探知、水草避けセンサーなど多彩な機能を持った釣り専用高機能ドローン「ドラングラー」が完成した。
バス釣りの世界一を決める予選会は琵琶湖で行われた。世界中の注目が集まる中、ドラングラーに1匹目がかかった。大物だった。匠は慎重に、水面ギリギリの格闘を続けた。
次の瞬間だった。巨大な魚がガバリと現れ、ドローンを丸飲みして潜っていった。ビワコオオナマズだった。匠の夢は、二度と浮かんでこなかった。