アサガオの時間

　小学一年生のよっちゃんはアサガオを育てている。夏休みになって、プラスチック製の植木鉢を学校から家に持ち帰って、アサガオの世話を続けた。
　朝、アサガオに水をあげるよっちゃんとアサガオの緑の葉っぱを見ながら、おばあちゃんが、「よっちゃん、やさしくしてあげて、えらいね」と言った。
　アサガオの最初の花が咲いた三日後、よっちゃんは棺の中で眠っているおばあちゃんを覗き込んでいた。みんながたくさんの花を棺に入れて、よっちゃんもおばあちゃんの手の近くに花を少し置いた。「あ、アサガオ」とよっちゃんは思いついて声に出したけれども、叶わなかった。
　よっちゃんのアサガオは花を落とし、やがて薄茶色の実をつけた。実の中には学校で植木鉢に蒔いたのと同じ黒い種があった。「おばあちゃん」と、よっちゃんは思いついて声に出した。