精彩を欠く

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画家にはある特殊な能力が備わっていた。
描いた絵がそのまま立体的に浮かび上がるというもの。
もちろん自由に動いたりはしないが、彼の画力と相まって、作品はその辺の3Dプリンターなんかより遥かに精巧だった。

そんな彼の才能をマスコミは放っておかなかったし、メーカーは彼にイメージを伝えるだけで立派な模型が作れるようになった。とりわけ食品サンプル業界に革命が起こった。

八方から声がかかり、必要なものは全部描いてしまえる画家に不自由はなかった。

ある日、画家は愛人とバーで密会の最中であった。するとどこかで見られている気配を感じる。

パパラッチに違いない、そう直感した彼は愛人を死角に隠し、咄嗟に妻のスケッチを仕上げる。

これなら撮られても問題ない、そう安堵しきった画家を見つめていたのは、他でもない彼の妻その人だった。


正妻を描いてしまうとは画家も精彩を欠いたものだ。
その他
公開:18/02/22 15:22
更新:18/02/22 15:24

おかだ

大学生。楽しいことを思いつくと嬉しい。

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