浄化薬

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結婚まで考えていた彼女にフラれて落ち込んでいるおれに、同期の高梨が一錠の薬をくれた。それは浄化薬といって、体の中の負の感情を尿や排泄物と一緒に外に出してくれる効能があるという。
「出世争いのライバルがそんなんじゃ、張り合いがないからな」
ぶっきら棒にそう言った高梨を見て、持つべきものは仲間だなと、心底感動した。
薬の効果はてきめんで、彼女への未練はすっかり断ち切れ、体が軽くなり、余計な想いが無くなったおれは生まれ変わったような心持ちがした。

結果として、二人で争っていた課長の椅子には高梨が座ることになったが、悔しさは微塵もなかった。
何故だかあれ以来、出世したいという欲望もおれの中から綺麗さっぱり消え去っていた。
その他
公開:17/10/29 15:11

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