冬のチケット

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うだるような暑さの日、涼みに入った催事場で「冬のチケット」に心を奪われた。

「美しい冬を満喫できる」という冬のチケットは、雪のように真っ白な上質紙でできていて、1枚5000円、6枚セットで29800円だった。

「こちらの商品、とても素敵ですよ」と店員に声をかけられた。

「体験版もございます。どうぞ」
手渡されたチケットには、「試供品(3分)」と書かれている。
「行く前に準備が必要ですので…」という店員の声を聞く前に私はすでにチケットを切っていた。

私は瞬時に真っ白な銀世界に放り込まれた。サンダルに半袖、膝上のスカートの格好のままで。素肌の部分に当たる雪はひきつるほど冷たく、足元は冷たいを通り越して痛い。

気がつくとコートを手に持った店員が目の前にいた。ガチガチと歯を鳴らす私に向かって、店員は呆れ果てた顔で「説明を聞いてからお使いください」と雪よりも冷たい一言を言い放った。
ファンタジー
公開:17/10/26 23:06
更新:18/06/01 19:04

ぱせりん( ひろしま )

北海道出身です。

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