カメレオンネイル

物心ついた時から、私のツメはカメレオンのようだった。目で見たものを両手のツメに写すことができる。写したものは1時間ほどで消えてしまうが、幼い頃はよく、動物や花などをツメに写して遊んでいた。
このツメは、ショックな出来事も写してしまう。テストで赤点を取った時、点数が爪に写ってしまい、自分の意思では消すことができなかった。爪が内側に来るように手を握ったり、ポケットに手を入れたりしながらやり過ごし、一晩寝たら点数は消えていた。
今回はこのツメが役に立った。私は人通りの少ない道で、通り魔に襲われた。白昼堂々の犯行で、すれ違いざまに太ももを刃物で切りつけられた。
ツメは連続写真のようになり、左手の中指のツメに写った顔と右手の薬指に写った服装が決め手となり、すぐさま犯人は逮捕された。
太ももの傷も浅く、大事には至らなかったが、事件から3週間が経過した今も、ツメから犯人の姿が消えてくれない。