かぐや姫

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10歳の私は、図書館で借りた哲学の本に書いてあった、恋愛の現実に絶望していた。人間である事にすら嫌気がさしてしまった。

(私は本当は月からやってきたのかもしれない。いつかお迎えが来て、羽衣をまとって嫌な事は忘れ、不老不死になって月で穏やかに暮らすんだ。だから、地球の人間と本気の恋なんてしない。)

思春期の私は、妄想と自制の海で、遠い月の世界に想いを馳せるかぐや姫だった。

だけど、いつしか私も大人になった。色々な価値観があると知り、あの図書館の哲学の本だけが正しいわけではなかったと覚らされる。そして、だんだんと人に好かれる事から逃げられなくなり、そうすると、人を好きになる事から逃げられなくなるのも時間の問題のようだった。

現代のかぐや姫は月に帰らない決断をするかもしれない。この瞬間が1秒でも長く続くのなら、不老不死なんていらないと、あの時、思ってしまったから…。
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公開:17/10/30 13:26
更新:17/11/07 01:23

イロハマイ( トーキョー )

普段は曲を作って歌ってます。
妄想と空想が好きです。

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