退屈がまぎれる口紅

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雨ばかりで外にでるのが億劫な日々が続くので、このあいだ、新製品として発売された「退屈がまぎれる口紅」を買ってみた。普通の薄い赤色でちょっと地味な印象しかない。それは顔が地味だからだと気づいて眉毛が下がる。「そんなこと、ないって。あんな奴らの言うことは気にするな」 自分の唇がしゃべっている。「色なんて光の反射の仕方でどんな風にだって見えるんだ」 赤色から青、黄色、紫、深い海のような緑と唇が変わる。「ほんと、色って変わるんだ」「見ている気持ちで見え方も変わるのさ」元気が出てきた。雨降りだけど、出かけたくなって本屋に行った。偶然クラスの男子に会った。一言も話したことはなかったけど、田丸雅智さんの本を読んでいたから思いきって話しかけてみた。読書好きで話が合うなんて思いもしなかった。何日か経って、口紅は塗ってもなにもしゃべらなくなった。退屈はなくなったけど、ひとりで議論することがないのも寂しい。
ファンタジー
公開:17/09/22 20:17
更新:17/09/22 20:40

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