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ある酒場に、仲のいい二人がいつも来店していた。彼らの名は麦芽と酵母という。酵母は目が不自由だった。
麦芽はビールが大好きだった。酵母は下戸で酒は一滴も口にしないが、常に笑顔で麦芽の隣に座っていた。
麦芽がゴクゴク喉を鳴らしてビールを飲む音を聞いて酵母が言った。
「豪快な飲みっぷりだ。いい事があったな。仕事がうまくいったか」
麦芽が答える。
「新製品の開発で社内表彰されたよ」
またある時、麦芽はクイっと一息にグラスを空けていた。酵母は言った。
「その飲み方は、何かを忘れようとしているな。さては彼女に振られたか」
麦芽が答える。
「恋人に愛想をつかされ、今別れてきたところだ」
周囲は、二人の会話を聞き、麦芽のビールを飲む音だけで、酵母が彼の心をすべて言い当てているのに驚いた。
時は流れ、酵母は病に倒れ世を去った。
麦芽は酒を断ち、二度とその酒場を訪れることはなかった。
麦芽はビールが大好きだった。酵母は下戸で酒は一滴も口にしないが、常に笑顔で麦芽の隣に座っていた。
麦芽がゴクゴク喉を鳴らしてビールを飲む音を聞いて酵母が言った。
「豪快な飲みっぷりだ。いい事があったな。仕事がうまくいったか」
麦芽が答える。
「新製品の開発で社内表彰されたよ」
またある時、麦芽はクイっと一息にグラスを空けていた。酵母は言った。
「その飲み方は、何かを忘れようとしているな。さては彼女に振られたか」
麦芽が答える。
「恋人に愛想をつかされ、今別れてきたところだ」
周囲は、二人の会話を聞き、麦芽のビールを飲む音だけで、酵母が彼の心をすべて言い当てているのに驚いた。
時は流れ、酵母は病に倒れ世を去った。
麦芽は酒を断ち、二度とその酒場を訪れることはなかった。
その他
公開:25/10/19 08:01
老後の楽しみに、短いものを時々書いています。
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