最後のプレゼント

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自分の力を試したくて転職することにした。今日は最後の出勤日。ロッカーに忘れ物がないか確かめていると、後輩のミカがニコニコしながら近づいてきた。
「セーンパイ! お疲れ様です! これ、よかったらどうぞ!」
ミカから手渡されたのは大きな箱だった。綺麗にラッピングされているから、餞別のつもりなんだろう。
「やだぁ、気を遣わなくていいのに」
「私の気持ちです! ぜひここで開けてください!」
「えっ、ここで!?」
一瞬だけ戸惑ったけれど、ミカの気持ちがうれしくてラッピングを外した。そうっと、蓋を開ける。中からは真っ黒な煙がもわりと立ち上り、辺りに充満した。箱は空っぽだった。
「センパイ、知ってます? 受け取られなかった悪意って行き場がないんです。ちゃんと持ち帰ってくださいね。センパイが放った悪意なんですから」
天井に滞留している真っ黒な煙には無数の目があった。わたしは震えながらその場に座り込んだ。
ホラー
公開:25/09/16 21:55

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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