サンタさん

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人件費の高騰でサンタさんはとうとうトナカイを雇えなくなり、期間限定での助っ人求人チラシを出すも応募者は
ゼロ。雪は深まり夜空は冷たく光りクリスマスの足音だけが容赦なく近づいてくる。
そりを引く者がいなければ世界中の子供達に贈り物が届かない。胸を締めつける不安に、サンタさんは最後の祈りを込めて空を仰いだ。どうか、誰か…
その瞬間、月光が射し、ふわりと影が降り立った。私が引きましょう。響いた声は風の様に澄んでいた。
姿を現したのは、星屑をまとった流れ星の精。尾を揺らすたび火花のような光が舞い、そりの金具がきらきらと輝いた。
精はにっこり微笑むと、光でそり全体を包み込み、夜空の奥へと通じる眩い道を開いた。
こうしてその年、世界を駆け抜けたのは、伝説となった星のそり。サンタさんは誰より驚いていたが、
子供達はもっと喜んだ。なにしろ
窓を開ければ、空の彼方で流れ星が鈴の音を鳴らしていたのだから。
ファンタジー
公開:25/11/30 12:38

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