チビチビエコカー

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 新型エコカー「チビチビ」をついに購入した。ガソリンをチビチビとしか消費しないので、地球にも財布にも優しいという。
「大切に乗って下さいね」
 販売店の兄さんは心配そうだった。
 確かに噂通り何百キロ走ってもほとんど燃料計に変化がない。これはいい買い物をしたと嬉しくなった。
 夏の日だった。豪雨で視界が悪く慎重に走っていると、対向車のトラックと猛スピードですれ違った。「ザブン!」フロントガラスに大量の泥水を浴びせられると、車は勝手に路肩へと向かい止まってしまった。どんなにアクセルを踏んでも動かない。エンジンは動いているが変な音を出していた。
「ゴクッゴクッ」
 何かを飲んでいるような音が響いていた。燃料計はみるみる下がり、すぐに空になった。すると、今度は「グオーグオー、ゴゴゴ」という低い音。
 レッカーして販売店に持って行くと、兄さんはため息をついた。
「やけ酒ならぬやけガソリンですね」
ファンタジー
公開:25/11/09 23:38

吉村うにうに( 埼玉県 )

はじめまして。田丸先生の講座をきっかけに小説を書き始めました。最近は、やや長めの小説を書くことが多かったのですが、『渋谷ショートショート大賞』をきっかけにこちらに登録させていただきました。
飼い猫はノルウェージャンフォレストキャットです。
宜しくお願い致します

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