人見知り路線

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原宿で声をかけられたときは詐欺を疑い、メールをもらっても無視していたけど、京都にある某有名店が作った季節限定八ツ橋持参の実家突撃作戦で気持ちが陥落してしまった。特にレッスンもなく、私のアイドルデビューが決定した。
「……あの……それで……どんな衣装になりますか? あまり露出が多いと両親が……。私もそういうのはちょっと……困ります」
初めが肝心だと思い、勇気をだして言ったけど、マネージャーはにこにこした表情のまま、こちらを見ている。私の声は蚊が鳴くより小さいから、たぶん聞こえなかったのだろう。用意してもらった拡声器で同じことを言おうとしたら、「大丈夫ですよ」と制された。
「君は人見知り路線で行くから、心配しないでください。コンセプトは『見えないアイドル』です」
怨恨チックな幽霊じゃなく、爽やか系でいくそうだ。それを聞いた途端、私は地上に留まる意味を失い、成仏した。
ファンタジー
公開:25/07/03 09:26

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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