アロハシャツ

コナコーヒーの香りがする。アロハシャツがハワイに帰りたいなぁと呟くと一緒に掛けられていたシャツが、君は日本生まれじゃないのかと尋ねた。俺は日本生まれの着物だけれど、移民の荷物に詰められてハワイに行ったんだ。
移民夫婦は着の身着のままでコーヒ農園で働き続けていた。奥さんが傷んでいた俺をほどいて、アロハシャツに作り変えてくれた。
俺は農園に居た時が一番幸せだったのに、ビィンテージアロハとして店に売られ、日本人に買われてこの家に来たんだと。
ある日ハワイの友人が日本のこの家に来た。アロハシャツを一目で気に入り、譲って欲しいと主に頼みアロハは一緒にハワイに帰ってしまった。
友人はコーヒー農園主だ、今日も送られてきたコーヒーの香りが漂っている。
シャツは淋しかった。夏に成り海風が家に入ってきたので、彼に会いたいと話すと、秋になったら風向きを変えハワイに行くから君を飛ばしてあげるよと約束してくれた。