別れ霜

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 新茶の季節がやってきた。八十八夜が過ぎ、若い娘たちが新茶を摘んでいる。茶葉の大敵である霜が降りないように大きなファンで茶畑の空気をかき回して霜が着くことを防止している。その光景は、まるで年頃の娘に悪い男が寄ってこないように大切に育てられている箱入り娘を想像させる。
 とある茶畑では、見たこともないほど大きなファンが稼働していた。若い娘たちが集まって歌いながら新茶を摘む姿が何とも愛らしい。よく見ているとそんな若い娘たちを若い男たちが目をぎらつかせて狙っている。じわじわと茶畑の中を男たちが身を屈めて進んできた。このままだと若い娘たちが、さらわれてしまうのかも知れない。
 その時、大きなファンが突然動き出した。男たちの目の前まで移動したかと思うと、いきなり最大出力で回転しはじめたのだ。不思議にも下心のある男たちだけが吹き飛ばされた。茶畑では何事もなかったかのように茶摘みの歌が響き渡っている。
ファンタジー
公開:24/05/04 17:21

松浦照葉( 福岡県 )

IT業界を卒業し、小説執筆中です。
普段はnoteでショートショートを投稿しながら、AmazonとAppleと楽天で小説、実用書の電子書籍を販売中です。
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