Bee玉

8
11

「珍しいビー玉が手に入った」と、駄菓子屋のばあちゃんが出してきてくれた。
見た目には変哲のないビー玉だが、透明な球体の中を覗いて驚いた。
無数の蜂の群れが六角形をした蜂の巣に蜜を運び込んでいるようだ。「ブンブン」と羽音も聞こえてくる。すると、俺と目が合った一匹の蜂がこちらに向かってきて、刺そうとビー玉のガラスをカチカチ叩いてきた。
俺は思わずビー玉から目を背けた。
ばあちゃんが意味ありげに笑いながら言った。
「このビー玉は『Bee玉』と呼んでね。蜂がいただろ。あれは向こうの世界で、花の蜜を持ち帰っているんじゃ。ただ、あちらの世界にとっては、こちらが威嚇の対象でしかないがね。
そろそろBee玉が蜜月を迎えるんで、誰よりもビー玉が好きなお前にやろうと思ってね」
すると、Bee玉は黄金に輝き始め、溶けてキラキラとした液体が流れ出した。
「これは蜜の雫。舐めれば不老不死になると伝承されておる」
その他
公開:24/05/03 06:54
更新:24/05/03 07:01
ビー玉 駄菓子屋 ガラス Bee 蜜月

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容