振袖カー

ドライブイン成人式がメジャーになって、振袖カーというものが登場した。一日限りで車体を振袖のようにラッピングして、晴れの舞台に臨むのだ。
ある車は鮮やかなピンク地に鶴が描かれたデザインをしていたり、また別の車は上品な濃紺地に白い牡丹が咲き誇っていたりして、殺風景な駐車場もこの日ばかりは華やかに彩られる。サイドミラーから垂れ下がる袖もひらひら揺れて、とても雅だ。
近ごろはBluetoothから流れる市長の言葉をクラクションで邪魔する者がいて問題にもなっているが、集まった若者たちはみな窓越しの再会を懐かしむ。
そして式が終わると、若者たちはエンジンをかけてアクセルを踏み、それぞれの道へとたくましく旅立っていく。
ナビのない、自分だけの大人の道へと。