夢十夜

6
8

こんな夢を見た。
おれは一輪の真白な百合の花だ。
遠い空を毎日眺めて過ごしていたが、やがて朽ち果てた。

こんな夢を見た。
おれは一本の線香だ。
薬缶頭の和尚の読経を聴きながら、やがて灰となり無となった。

こんな夢を見た。
おれは大きく真っ黒な杉の木だ。
根元で幾人もの人間が朽ち果てたが、やがておれも朽ちた。

こんな夢を見た。
おれは一匹の小さな蛇だ。
蛇使いの爺さんの笛の音を聴きながら、一緒に河の中へ這入っていった。

こんな夢を見た。
おれは大きな白い馬だ。
美しい女がおれの背に跨り、暗闇の崖の淵へ吸い込まれていった。

こんな夢を見た。
おれは一艘の大きな船だ。
大時化の日に漁に出て、漁師たちとともに黒い海の底へと落ちていった。

 こんな夢を見た。
    こんな夢を見た。
  こんな夢を見た。

おれは何度も何度も夢を見続け、いまは真っ白になった天空をじっと見つめている──。
ファンタジー
公開:20/02/21 16:49
ショートショートカレンダー 2月21日「漱石の日」 夢十夜

渋谷獏( 東京にいるけっどカンサイジ〜ン♪ )

(獏・ω・) 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。
土器っ土器っ〜♪ 獏ぅ獏ぅ〜♪
https://twitter.com/ShaTapirus
https://www.instagram.com/tapirus_sha/
http://tapirus-sha.com/

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容