マトリョーシカがこわいわけ

17
15

 ぼくはマトリョーシカがこわい。
 それはおばあちゃんの部屋の奥にあって、ぼくはずっと、ボーリングのピンだと思っていた。
 ある日、おばあちゃんの部屋へ行ったら、おばあちゃんは部屋の奥を見て布団にペタンと座っていた。
 「おばあちゃん?」
 って呼んだら、おばあちゃんの腰から上だけがグルンって回転して、「タックン。こっちへおいで」って言いながら、コロンって布団に転がった。
「あらあら。タックン。そのマトリョーシカをとっておくれ」
「マトリョーシカってなに?」
 ぼくは、泣きそうになりながら聞いた。
「そのボーリングのピンみたいなお人形だよぉ」
 ぼくは、無理だった。そのあとママの声を聞いたような気がする。
 その夜、おばあちゃんはいままで通りだったけど、でも少し小さくなってたと思う。それと、マトリョーシカっていうのも、少し小さくなった気がする。
 だからぼくは、マトリョーシカがこわいんだ。
その他
公開:20/04/07 11:18
こわいわけ

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容