生水

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村の池にはイキミズさんが棲んでる。
一応棲んでる事になってる。代々うちで守ってるが、実物がどんなかは知らない。
水に繁殖する藻の一種だろうと親父は言ってる。雪が融けて気温が上がると、池は緑に染まる。山の樹より先に、びっしり水草で覆われ、それから木の芽が吹く。順序は絶対逆にならない。だから村じゃ、春はイキミズさんが作るもんで、イキミズさんは緑の素だと信じてる。

赤ん坊の事を、みどりごって言うだろ?村に子供が生まれると、百日祝いにイキミズさんの水を飲ます。緑の素をもらった、本物の緑児だから、春生まれの子は丈夫に育つんだって。お陰で村じゃ、子供は春にしか産まない。迷信も甚だしいって俺は思ってた。早産で冬に生まれた俺の子が、春前に死んだのも偶然だ。この百年、死んだ子供が他にいないのも偶然だ。
生まれ直しだって、池に返させられたあの子が、今俺の腕で泣いてるのも、村中が俺を騙そうとしてるだけなんだ。
ファンタジー
公開:20/03/09 20:34
みどりご(嬰児/緑児)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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