職人は語る

44
26

まずは海からコトを収穫する。使うのは葉の部分だけじゃ。
それを釜に入れて煮込む。柔らかくなるまですぐの時もあれば、三日経っても柔らかくならんこともある。柔らかくなったら、冷めないうちに升目に流し込む。
経験を積めば、どれくらいの葉を煮込めば升目丁度になるか予測はつくんじゃが、欲が出るんじゃろうな。たいがいは大きすぎて升目からはみだす。
そんな時は余分な部分を切り落とす。しばらく寝かせて、浮き上がった不純物を取り除くこともある。
あとは押したり叩いたりの繰り返しじゃ。
そうやって升目に収まれば、次は天日干しで一日寝かす。すぐに上げる場合もあるが、そんな時は決まって瑕疵が後から見つかって、情けない思いをするもんじゃ。
そして最後にもう一度見直す。
職人として恥ずかしいものは出せんからの。
ここまでやって、やっと一枚。
たった一枚。
それを積み重ねて、気がつけば三百枚。
どれも大切な宝物じゃな。
ファンタジー
公開:20/01/15 00:00
更新:20/01/14 21:07
コトの葉 推(お)したり敲(たた)いたり 300作到達記念 皆様、これからもよろしく

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容