木でできた中央線

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今日は大雨。
改札を通り、階段を駆け上る。
ちょうど止まっていた電車に乗り込む。これで会社には遅刻しない。
これが僕の毎朝の通勤風景だ。
僕が乗ったのは木でできた中央線の車両。疲れ果てた現代人を癒すために導入された木材の車両は金属でできた無機質な従来のものより温かみがあり、何よりとてもいい香りがする。
だが僕が今日乗ったのは作られてからかなり経った車両のようだ。電車の板の継ぎ目から雨風が容赦なく入り込む。
満員の乗客たちは雨漏りを避けようとぎゅうぎゅうと押し合ってくる。癒しどころでは無い。
ドアのネジは少しずつ緩み今にも外に押し出されそうだ。雨に濡れた車両からはとてもカビ臭い匂いがして僕の鼻をつく。
突然車両が大きく揺れ、乗客の重みに耐えかねたドアが勢いよく崩壊した。
僕たちはそのまま外へ投げ出された。
まだ電車は荻窪だ。
新宿駅までまだ遠い、僕は会社に遅刻すると確信した。
その他
公開:19/10/06 23:49
電車 中央線

Miwa_san( 東京 )

アニメの美術監督をしています。
いつの日か絵本を描きたいと思っています。
ショートショートの世界から物語の構築の勉強をしたくて、田丸先生の講座を受講させていただきました。
稚拙な文章でお恥ずかしいですが、これから完成した作品を投稿できればと思います。

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