蛍光灯がこわいわけ

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 ジーッ・チカッ。ジー・チカッチカッ。
 僕は切れそうな蛍光灯がこわい。ちゃんと点いている蛍光灯もこわいけど、切れそうな蛍光灯の方が、よく見えるから。非常口の絵みたいな小さな人影が、ワラワラワラッて一方の端からもう一方の端へ一列に走っていくのが、とてもよく見えてしまうから。
 ちゃんと点いている蛍光灯は、中にいる人がまだ元気だから、次々と目にもとまらぬ速さで駆け抜けていく。だから、気にしないようにしていれば見なくてもすむんだけどね。
 棒の蛍光灯の中にはものすごく大勢の人が入っているのだと思う。だって、だれも反対向きに走っていかないから。丸い蛍光灯は、ずっと少ない人が交代で倒れるまで走り続けている。「丸い方が寿命が短い」って、お父さんも言ってた。
 切れかかった蛍光灯は「苦しい。助けて」って叫んでるみたいだし、切れた蛍光灯の中にはたくさんの死骸が入ってる。
 だから僕は蛍光灯がこわいんだ。
ホラー
公開:19/11/04 10:36
こわいわけ

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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