僕の伯母さん

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引っ越しの荷物の中に見慣れぬ扇風機。エアコン取り付けるからいいって言ったのに。母さんだな。
暑い日もあるが、エアコンは1週間後に来る。なんてことはない。
その夜、ウトウトしていたら急に気持ちのいい風が流れてきた。ああ、窓から……、じゃない!
枕元に、部屋の端に置いたはずの扇風機があった。暗闇の中、扇風機の横に人間の足が見えた。
「うわぁ!」
僕は飛び起きた。電気をつけるが僕以外には誰もいない。
それからの1週間、扇風機は僕に風を送り続けた。
怖かったが、気づいた。自分が一切暑い思いをしていないことに。
「あんたの所にあったのね」
電話で母は、扇風機は2年前に亡くなった伯母のものだと言った。

エアコンの取り付けが終わった後、僕は扇風機をビニールで丁寧に包むと押し入れにしまった。
「ありがとな、伯母さん」
翌日、エアコンが壊れた。
そう、伯母はすごく面倒見がよかった。おせっかいなくらいに。
その他
公開:19/11/01 09:39
更新:19/11/02 22:11

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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