渋谷小僧

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JR浜松町駅のホームにいる小便小僧は、分身の術を使って山手線に乗り込み、自由に移動しながら気に入った駅で下車する。
ある秋の日、ハロウィンの衣装を纏った人たちに混じって渋谷駅で降り立った小便小僧の分身は、居心地の良い場所を探し始めた。
松濤の閑静な住宅街や奥渋谷の商店街、青山学院大学のキャンパスまで足を伸ばしたが、最後に選んだのは、渋谷駅からほど近いスクランブル交差点のド真ん中。
小便小僧の分身は、ハチ公やモヤイを凌駕する渋谷の超人気像となり、渋谷小僧の愛称で親しまれるようになった。
交通の妨げになるという理由から渋谷小僧が撤去される危機もあったが、スクランブル交差点のロータリー化が実現し、なんとか難を逃れた。
実は、この渋谷小僧、ただの小便小僧ではなく、そのまま定住すると、その街を繁栄させる座敷童子であった。
その後、渋谷の再開発に拍車がかかり、ますます魅力的な街へと様変わりしていった。
その他
公開:19/10/26 09:02
更新:19/10/30 18:20
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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