一枚の天井と二枚の壁とが接する場所

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 部屋に優しい光が溢れている。薄いカーテン越しの初夏の日差しは、目を開けていても閉じていても同じように明るい。私は一枚の天井と二枚の壁とが接する角を眺めていた。部屋には、こういう角が理論上四箇所あるはずだったが、角というものが持つ負の波動に汚されていると感じることはなかった。だから私は安心して、その一角を眺め続けることができたのだった。
 だが、唐突に私は、昨夜本で見た立方体の図を思い出してしまった。その立方体の図は、見方によっては、裏返って飛び出してくるように見えたのだ。
 私は、慌てて目蓋を閉じた。しかし部屋は同じように明るく、あの角も消えはしなかった。
 このままでは裏返ってしまう。飛び出してしまう。
 私は部屋の角から目を逸らそうと、あちこちへ視線を動かした。だが、どこへ視線を移そうとも、角は視界の中心にあって、今にも、私を貫いて裏返してやろうと、舌なめずりをしているのだった。 
その他
公開:19/06/04 12:56

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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