ステイド・グラス

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作業台に、花瓶が所狭しと並べてありました。
形も色も大きさも取り取りの硝子達は、花瓶としては使われないまま、棚に飾ってあったものです。一つ一つ丹念に磨き、平面空間を立体で埋めて行く指遣いは、微細な曇りも逃さない視線は、愛撫でも施す様な、熱の篭もった戯れと真剣が混在しています。滑らかな表面に、今にも唇を寄せそうに見え、私は顔を伏せました。
「面白いか?」
こちらを見ず問う声は無表情でした。
「全部、処分するのですか?」
何より訊かれたくない事だったでしょう。工房の閉鎖が決まり、引き取り先のない品は、廃棄するしかありません。手ずから生んだ子を喪う痛みは、子のない私にもよく解ります。
細長い筒型が、硬く澄んだ音で破片に変じました。
「砕いて繋いで窓にする。ひとつ残れば十分だ」
無数の硝子片を通して、この人は生涯、私を見てくれるでしょうか。それともいつか私も、床で割れた花瓶の末路を辿るでしょうか。
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公開:19/08/06 22:30

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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花神の庭

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