たなばたあケーキ

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7月7日朝から曇り。
今にも雨が降りそうな空。
「母ちゃん、なんで空は意地悪するのかな。一年に一回しか会えないのに」
母ちゃんは空を見上げて、「さあ、どうしてかね」と言う。
ポツンと雨粒が顔に当たる。
「空はご機嫌ななめだね。おいしい匂いを届けてあげよう」
母ちゃんはキッチンに行き、ケーキを作り始めた。
「スペシャルなバターを使った、たなばたあケーキだよ」
「なんだよ、ダジャレかよ」
ケーキはパッサパサで不味そう。
「仕上げはまだだよ」
母ちゃんが窓を大きく開けると、ケーキの甘い匂いがふわふわと空に上っていく。空が笑う。母ちゃんは雨粒をケーキに閉じ込めた。パサパサのケーキはしっとりして美味しそう。
「母ちゃんスゲー!魔法だ」

夜、父ちゃんが仕事から帰ってきて
テーブルの上のケーキを見つけた。
「たなばたあケーキか。母ちゃん会いに来たんだな」
空は晴れ。母ちゃん星もきれいに見えた。
その他
公開:19/07/07 13:40
更新:19/07/07 14:37

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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