声に囲まれて

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「おかえり」大学から帰宅する私を迎えてくれる声。
「ただいま」私は応える。挨拶をしないやつはダメだ、と私が挨拶を疎かにしていた中学生の頃に厳しく教わった。
「洗濯物乾いてるからおろしちゃいな」「うん」小学生の頃、家事を渋ると、もうお前には頼まないと突き放され、泣きながら私にやらせてくださいと弁明するということが何回か繰り返されてのち、家事は従順にこなすようになった。
「今日の夕飯は何がいい?」私は考える。「生姜焼きの気分」「なら豚肉買ってきてちょうだい」「わかった」「ちょうどいい。わしのおつかいも頼まれてくれるかい? お駄賃は弾むよ」「私もう子どもじゃないんだから。お気持ちだけで充分」「そうかい。じゃあ、よろしく頼むね」
私は財布を携え、靴を履く。

「いってきます」誰もいない家の中に向って挨拶をした。「いってらっしゃい」スピーカーから流れる家族みんなの声は今日も暖かい。
ホラー
公開:19/03/18 22:08
更新:19/03/18 22:18

上北 うてな

行き場を失い、メモ帳に彷徨うネタ達をここで消化&昇華させてます。

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