夢魔病

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「先生ありがとうございます!」
「いえいえ、また発症したらお気軽に呼んで下さい」
しかし、今日も胸糞の悪い夢だったな。
自分の親に何度も何度も突き落とされる夢とは⋯⋯。
悪夢はすべて喰ってやったから、あの娘も随分と楽になった事だろう。

突如として恐ろしい夢を見続ける夢魔病──。
俺は悪夢を喰う伝説の獣「獏」を身内に宿す祓魔師の家系で、いろいろな村に行っては、蔓延した病を治療して廻っている。
悪夢を喰ってやると晴れやかな気分になり、みな俺に感謝してくれた。そんな恐ろしい夢ばかり喰べて大丈夫なのか、とよく心配されるが、少し誤解がある。
俺は人の悪夢が視たい。
人の憎悪の感情に触れたい。
健全な夢では飽き足らず、人の悪夢を好む悪食の獣がその正体だ。
そして生半な恐怖では刺激が無くなり、さらなる悪夢を求め各地を彷徨っているのだ。

「さて、今日も次の村に入る前に悪夢の種を撒いておくとしよう⋯⋯」
その他
公開:19/03/03 16:02
更新:19/04/20 11:21
バーテンダーと時間旅行 おおえさきさん わての似顔絵

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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