内臓二十物語 第二十臓(子宮)

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子宮の壁には胎盤があり、そこからいくつもの臍の緒が伸びていた。同じ羊膜の中に、10人の兄弟が窮屈におさまっている。
果実のように胎盤にぶら下がる兄弟は、大きさも見た目もまちまちだ。
僕は一番大きくて、手足も揃っていたけど、僕の半分くらいの大きさの兄弟や内臓が足りない兄弟、手足が欠けてる兄弟もいた。

回転しブンと体を揺らした。兄弟たちは身構え、お互いの存在を睨み合う。これは戦いだ。
僕は羊膜を蹴り、突っ込んだ。
1人目、一番小さい兄弟の臍の緒を引っこ抜く。2人、3人…残るは1人。僕らは見つめ合った。同じ子宮を共有する兄弟だって?母の愛は僕だけのものだ。最後の1人の臍の緒を引っこ抜いた。
「ハズレー。残念でした」
プチンと何かが切れる音がして、天井が揺れた。あ、と思う間も無く胎盤が剥がれ落ち、大量の血液にのみ込まる。慌てる僕を見て、兄弟はケラケラと笑い、あーー、と母の叫びが子宮にこだました。
その他
公開:19/04/30 02:14
更新:19/04/30 16:38
第二十臓(子宮) 原案そるとばたあ 内臓二十物語

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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