ぶらんこ

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 ぶらんこが気持ちがいいのは、君の身体が行き来する振り子の軌道上に、魂が抜けてしまう感じなのだ。と、伯父さんが教えてくれた。
 そうやってだんだんに大きく揺れるぶらんこに、無数の君の残像が、バラバラバラバラと取り残されていくんだよ。身体はそれらの魂の残像を、その身体にしまいながら揺れるのだ。そうして、その残像には君の思い出が滲み出しているのだよ。
 その日一番高いところで君の身体が一瞬止まるとき、その瞬間の身体が取り残した君の魂の一切が抱えていたものは、そこにそのまま留まり続けて、次にぶらんこを漕ぐ誰かの身体が、もしも、今、君が取り残してしまった君の魂の残像に、ぴったり重なったとしたら、その時、君のその残像は、新しいその人に仕舞われていくんだよ。
 伯父さんは、ぶらんこをぴょんと飛び降りて、僕の前に立ってこう言った。

 だから、ぶらんこからは、絶対に、飛び降りてはいけないんだよ。

と。
ファンタジー
公開:18/11/27 14:05
更新:18/11/27 21:13

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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