落ちてゆく空で

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その飛行機は泣いていた。
仲の良いヘリコプターや衛星たちが声をかけても、彼女が泣きやむことはなかった。
着陸している間は笑顔で地上の人たちと話すから、その涙は知られていない。
僕は地上で捨てられたコンビニ袋。上昇気流に乗って今は雲海を漂っている。何が起こるかわからないのが袋の一生だ。国道沿いのコンビニを出た直後に捨てられたときは買い主を恨んだけれど、今は旅のきっかけをくれたことに感謝している。
雲上の澄みきった空で、朝日を浴びながら飛ぶ彼女は美しく、自信にあふれていた。風に流されるだけの僕は、雲海の波間で彼女の存在に震えた。
さわさわさわさわ。
音に気づいた彼女は僕のことを見て「きれいだよね」と言った。
彼女は太陽に泣いていた。
かなしい涙なら彼女を包んであげたいと思ったけれど、そうじゃなかった。僕はうれしくて、彼女の涙を拾い集めることにした。
その重みで落ちてゆく、途方もない幸せ。
公開:18/10/18 14:14

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