にせもののぼく

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僕は、彼の偽物であることを知っている。
彼というのは、今この街を照らしている夕陽のことだ。

そして僕は、彼が水面に映った姿。ゆらゆらと揺れているだけ。世界を照らすことは出来ない。
水の中と外の世界は隔たりがあって、干渉することなど僕には出来ない。

そんな日々に嫌気がさしてきて、独りで泣いていた。そんなとき。

どぼん。

水中に何か落ちた。
人間の女性だった。あたりの水に、涙の色が広がった。
彼女の涙だろうか。胸が痛む。

このままにしておくわけにはいかない。
彼女の体に手を伸ばす。


気が付いたら、川原の上に寝転がっていた。
橋の上から飛び降りたはずなのに、服が濡れていない。髪も乾いている。

ふと視線を落とした先に映る、水面の夕陽に目が釘付けになる。
水面のその姿に、なぜか胸の奥が温かくなるのを感じた。

揺らめきながら輝く夕陽にそっと触れると、あたたかな涙が頬を伝った。
その他
公開:18/11/01 19:33
夕陽

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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